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§被覆肥料を用いたメロンの育苗時全量施肥法
JA全農営農・技術センター肥料研究部
藤澤 英司
§遺伝子組換え食品に関するアンケー卜の結果
石川県農業短期大学 農業資源研究所
島田 多喜子 大谷 基秦
JA全農営農・技術センター肥料研究部
藤澤 英司
被覆肥料(肥効調節型肥料)は,特にシグモイド型溶出タイプの登場により,単なる追肥省略というだけでなく,これまでとは全く異なる施肥法を可能にした。例えば水稲では施用直後から一定期間は溶出しないという特性を生かして,播種と同時に育苗箱にシグモイド型被覆尿素を施用する方法(育苗箱全量施肥法)が確立され普及しており,施肥作業の大幅な省力化と肥料利用率向上に大いに役立っている。
この施肥法は施用後初期の育苗期間中は溶出抑制がほぼ完全になされ,しかも本田への移植のタイミングで溶出が開始するという,非常に精密な溶出コントロール性能が要求されるが,被覆肥料の特長を最大限に生かした施肥法だといえる。
一方,野菜の施肥においては水稲とは異なり,栽培様式や栽培時期の多様性から育苗箱施肥のようなこれまでの常識を覆すような画期的な使い方はまだ少ないようである。しかしながら,被覆肥料の特長の一つである温度による溶出コントロール性を活用すれば,多様な作型における溶出が予測できるので,それに対応した施肥体系を組み立てることが可能である。
すなわち,野菜栽培においても適当な被覆肥料を用いることによって,水稲と同様に育苗時に必要な肥料を全量施用し,省力化とともに肥効率アップによる施肥量の削減等の効果が期待できる。このとき,目的とする作物の育苗時期や栽培期間の温度条件を予め設定することにより,それに見合った溶出タイプの被覆肥料を選択することが必要である。
当センターでは野菜の育苗時にポットやセルトレイに必要な肥料を施用する方法は,すでにいくつかの野菜について検討しているが,ここでは栽培が比較的難しいとされるアールスメロンを対象とした育苗ポット全量施肥について紹介する。
野菜を対象とした硝酸系のシグモイド型被覆肥料として被覆燐硝安S70および同S80(保証成分はいずれもアンモニア性窒素13.0%,硝酸性窒素13.0%,水溶性りん酸1.0%)を用いた。ちなみに,これらはいずれも試作品のため仮称である。
第1表のとおりアールスメロンを育苗し栽培した。被覆燐硝安は,鉢上げ時に育苗ポット(3.5号黒ポリ)に市販育苗用培土と混合して施用した。被覆燐硝安はS80単独の区と溶出が速いS70にS80を2割配合した区の2種類とした(第2表)。施肥量は対照の速効性肥料分施区が窒素成分として株当たり10.0gであるので,ポット全量区は2割減肥(8.0g)および4割減肥(6.0g)とした。


育苗は特に支障無かったが,ポット全量施肥区はわずかに溶出したためか葉色が濃く,窒素含有率が高かった(第3表,写真)。


鉢上げから20日後に本圃に定植したが,いずれの区もその後の生育は順調にゆき(第4表),収量,品質(糖度,果形,ネット)とも対照と遜色無かった(第5表)。特に4割減肥した区でも同等の収量,品質が得られた。


栽培に用いた被覆燐硝安を育苗ポットおよび本圃に埋設し,適宜取り出して溶出率を測定した。またこの時の地温を測定して日平均地温を求めた。育苗から本圃での栽培を経て,収穫時までの被覆燐硝安の溶出率の推移について,実測値および地温から計算した推定値を図示した(第1図)。

実測値と推定値はほぼ一致し,温度による溶出コントロール性が高いことが確認された。ちなみに,推定に必要な被覆燐硝安の溶出特性値は予め温度数段階での低温溶出試験を行なって求めた。
鉢上げ後定植直前までの溶出率はS80区およびS70+S80区ともほぼゼロであった。定植後程なくしてS70+S80区では溶出が開始し,S80区はやや遅れて溶出が始まった。最も生育が旺盛となる5月中旬から6月中旬にかけて溶出が高まった。このときのメロン地上部の様子は,株元に多量の肥料があり,しかも根鉢の範囲内という局所にあるものの濃度障害のような症状はみられなかった。
本圃での土壌中の窒素濃度をみるため,生育中のメロンの株元にポーラスカップ(外径3mm,長さ100mm)を差し込んで吸引し土壌溶液を採取した。差し込む位置は根鉢の中心とし,真空採血管を連結して一夜おいた。採取した土壌溶液中の硝酸態窒素濃度の推移は第1図のとおり,対照の速効性肥料分施区は非常に低い濃度であったが,被覆燐硝安施用区はこれに比べると非常に高い濃度で推移した。

これは土壌溶液を採取した場所が根の密度が最も高いところであったことと,被覆燐硝安が存在している根鉢部分であったことから,対照区では窒素が吸われてなくなってしまったのに対して,被覆燐硝安施用区では肥料成分が連続的に供給され続けていることを示すものと考えられる。
また,最も生育が旺盛で肥料からの窒素供給も盛んな時期である5月20日と5月27日に下位葉を採取し,葉柄の搾汁液中の硝酸態窒素濃度を測定した(第6表)。被覆燐硝安施用区はいずれも対照区より低く,土壌溶液の硝酸態窒素濃度とは異なり,作物体内の硝酸濃度が異常に高まるということはなかった。被覆燐硝安施用区は対照区の2~4割の肥料を減らしているので,その影響も考えられるが,生育や収量などの結果と考え合わせると,肥料を効率よく使っているものといえる。

シグモイド型溶出タイプの被覆肥料である被覆燐硝安をアールスメロンの鉢上げ時に育苗ポットに施用して育苗し,そのまま本圃に移植し収穫時まで栽培することができた。しかも,通常の施肥法よりも4割も施肥量を減らしても収量や品質は同等であった。これは肥料が根鉢内という根が完全に包み込める範囲の局所にあることから,徐々に溶出してくる肥料成分を効率よく吸収し,利用できたためと考えられる。
このような施肥法は,育苗期間中には全く溶出せず,本圃に移植したときから溶出が開始するという高い精度の溶出コントロール性とともに温度をモニタリングすることにより溶出開始時期を正確に把握することが可能になって初めて実現できたものである。
アールスメロンは比較的栽培管理が難しい作物の一つであるが,育苗時全量施肥法がこの作物で適用できることは,他の野菜にも同様の適用ができる可能性が高いことを示すものと思われる。ただし,その際には育苗期間や全体の栽培期間の長さ,作型における温度条件を予め把握して,それに対応した最適な溶出タイプの肥料を選択することが必要不可欠である。
この試験に用いた被覆燐硝安は試作品であり,したがって野菜の育苗に使用可能なシグモイドタイプの硝酸系被覆肥料は現在のところ市販されていない。今後,このような性能を有する被覆肥料が数多く登場してくれば,野菜栽培においてもこれまでとは全く異なる発想の施肥技術の実現が可能になると考えられる。
石川県農業短期大学 農業資源研究所
島田 多喜子 大谷 基秦
1999年10月30~31日,石川県農業短期大学の農大祭が行われ,附属農業資源研究所はそれに参画する形で研究所を開放した。その際,遺伝子組換え食品(註)(GM食品)に対する意識を調査する目的のアンケートを行った。
GM食品は,1997年に我が国での安全性が確認され,すでに我々の日常の食卓に何らかの形で使われており,意識しないで食べている。しかし,GM作物を使ったものであるという表示をすべきという消費者の強い要望により,農水省は2001年4月から一定の範囲で表示を義務づけると決定した。それに対応して,いち早くあるビール会社はビールの材料にGMトウモロコシの不使用を宣言し,他のメーカーも追従する形となっている。また,豆腐業界では,非GM大豆の確保に躍起となっているということである。そこで,GM食品に対する一般消費者の関心を知る一助として簡単なアンケート調査を行った。
(註)GM:genetically modified


回答者は合計195人であった。そのうち,男性36%,女性64%であった。年齢層は,41才以上の中高年が65%以上を占めていた(図1)。職業は,34%が主婦であった(図2)。


石川県農業短期大学の農大祭は,野菜等農産物が安く販売されることで人気があるため,中高年の主婦が多いことは当然である,また,毎日の食事を賄っている人たちであるため,このアンケートの回答者としても適任であると考えられる。
日常食品の安全性にどのように気遣っているかを調査するために,有機栽培野菜を例にとって問うた。常に有機栽培野菜を買っている人は,全体の12%にすぎなかったが,時々買う人も入れると49%と,約半数が安全性に気を使っていることが分かる(図3)。

また,有機栽培野菜は買わないが気にはしている人も含めると,70%以上となり,全く気にしない人は,28%であった。これを男女別に見ると,全く気にしない人が男性で38%,女性で22%であり,やはり女性の方が食品の安全性に気を使っているようであった(図4)。また,年齢が上がるに従って食品の安全性に対する関心が高く,30才以下の人の半数は気にしていないことを示した(図5)。


全体で,GM食品に対して大変興味を持っている人37%,少し興味を持っている人47%をあわせると,興味を持っている人は84%となり,関心度は非常に高かった(図6)。女性の方がやや関心度が高かったが,殆ど男女差はなく,また,どの年齢層でも80%以上の人が関心を持っていた。

やはり,新聞やテレビの報道などでGM食品が取り上げられでいるので,関心度は高いということである。
GM食品に対する態度を,豆腐を例として問うた。現在,スーパーマーケットでは「国産大豆使用」豆腐と,何も表示していない豆腐が売られており,後者は前者の1/3ぐらいの値段である。「GM大豆使用豆腐」と表示されているものは販売されていないが,もし,そのような表示があれば,どれくらいの人が買うか調査した。全体の38%の人が,価格の高い「国産大豆使用」を購入し,52%の人が無表示の安い豆腐を買うと答えた(図7)。

それに対して,もっとも価格の安い「GM大豆使用豆腐」を買う人は10%にすぎなかった。これを年齢別に分けると,年齢が高くなるに従って国産大豆使用豆腐を買う人が多くなり,30才以下ではGM大豆使用の安い豆腐を買う人が20%以上あった(図8)。これは,有機栽培野菜の購買と同じ傾向であり,食品の安全性に留意している人が「国産大豆使用」を選ぶということを示した。

無表示の豆腐は「GM大豆使用」と解釈してよいのであるが,無表示のものを半数以上の人が購入するのは,曖昧な方がいいということであろうか?それとも,無表示はGM食品でないと解釈しているのであろうか?この半数以上の人たちが,2001年に表示が義務づけられたとき,どちらを選ぶのであろうか,興味深い。
GM食品に対する漠然とした不安は,遺伝子組換えに対する正しい知識によってある程度解消されるのだろうか。回答者の遺伝子組換え,あるいは遺伝子に対する知識を調査することは,重要であるが,その問いは簡単ではない。
そこで,今回は,単に「自分はよく知っていると思うか」という問いかけにした。その結果,12%の人がかなり理解していると認識しており,67%の少し知っていると答えた人を合わせると80%近くの人が知っていると認識していた(図9)。これは,何をどの程度,正しく知っているのか,はなはだ不明確で,この数字はあまり意味がないかも知れない。

このアンケートの回答者は,農大祭に来て,しかも農業資源研究所を訪れた人であるから,食品や農業にある程度興味を持っている人たちであろう。しかし,これから一般消費者の考え方の一端を知ることができる。食品の安全性に関して非常に関心が高く,従って,GM食品の関心も高く,年齢が高くなるに従って関心度も高くなることが明らかである。豆腐を例にあげたが,今後「GM食品」表示が義務づけられたら,消費者はどれを選択するのだろうか。
このアンケートの問いが必ずしも適切でないものもあり,十分な分析ができていない点があることは否めない。今後,アンケートの問いを検討するとともに,来年の農大祭の時にもこのようなアンケートを行い,意識の変化も調査したいと考えている。